個人開発は今から稼げるのか、11市場を実測した

「個人開発はオワコン」「今から始めても遅い」とよく言われます。それが本当なのかを、所感ではなく数字で確かめました。各市場について新規参入が儲けられているかを、公開APIと各社の年次レポートからClaudeを用いて実測しています。

先に結論:個人開発はオワコンなのか

個人開発は今でも収益化できます。ただし、すでに成功している市場へ後発で入り、同じものを作る戦略は非常に厳しいです。

勝ち目があるのは、新しい需要が生まれた市場と、まだ誰も積み上げていない領域です。

調査した11市場のほぼすべてで、収益は上位のごく一部に集中していました。インストール数・レビュー数・検索順位・既存ユーザー数といった、時間が経つほど積み上がる資産が、そのまま参入障壁になっているためです。

一方で、AIエージェント連携のような去年は存在しなかった枠では、公開から1か月の新規が上位に入る例が確認できました。数字の裏付けは各章に、まとめは末尾の結論に書いています。

調査した市場

興味がある市場の章から読んでいただければと思います。

  • モバイルアプリ市場(アプリ内サブスク)
  • Steamのインディーゲーム
  • Chrome拡張
  • Shopifyアプリ
  • Fab(Epic運営のゲーム開発用アセット販売所)
  • MCPサーバー
  • VS Code拡張
  • Atlassian(Jira・Confluence)アプリ
  • Roblox
  • 同人作品のダウンロード販売(FANZA同人)
  • 3Dモデル販売(BOOTH)

モバイルアプリ市場

RevenueCatを利用してサブスクに対応したアプリ115,000本を対象に、収益がどの層に集まっているかを調査しました。 調査結果は以下の通りです。

[結果1] サブスク収益の69%は2020年より前のもの

  • 全サブスクリプション収益の69%を、2020年より前にリリースされたアプリが占めています
  • 逆に2025年以降にリリースされたアプリは、全体の3%しか取れていません
    サブスクリプション収益の内訳。2020年より前のアプリが69%
  • 成長率は層でまったく違います。上位10%が+306%、上位25%が+80%、中央値が+5.3%、下位25%は-33%、下位10%は-60%
  • つまり下位4分の1は、前年より売上が縮んでいます
    サブスクアプリの年間成長率。中央値5.3%に対し上位10%は306%

[結果2] 新規は月2,000本→14,700本に増加

  • 新規アプリの登録数は、月2,000本(2022年1月)から月14,700本超(2026年1月)へ増えました
  • 新規のうち、2年で「毎月1万ドルのサブスク売上が入り続ける状態」に到達するのは4.6%です(1ドル150円で月約150万円)

予想はしていましたが、新規参入者が2年で実績を上げるハードルは高いことが改めて分かりました。

[結果3] 1年もたない契約が56%から72%へ

継続率についても調査しました。

年間サブスクの年次チャーンは約72パーセントで、前年の56%から悪化しました。また、3日トライアルの84%が初日でキャンセルされています。つまり入会が増えた一方で、それ以上に退会も増えている状態です。

年間サブスクの1年以内解約率。2025年の56%から2026年は72%へ悪化

モバイルアプリ以外の市場

審査のハードルが低く個人でも制作物を直接売れる市場として、以下の5つの市場を調査しました。

  • Steamのインディーゲーム — PCゲームの販売プラットフォーム
  • Chrome拡張 — ブラウザに機能を足すアドオン。有料化は自前決済が必要
  • Shopifyアプリ — ECサイトに機能を追加するアプリ。売り先は店舗オーナー
  • Fab — Epicが運営するゲーム開発用の3Dモデル・素材の販売所
  • MCPサーバー — AIエージェントに外部ツールをつなぐ規格。2025年に立ち上がったばかりの新しい枠

調査した結果は以下の通りです。

市場 母集団 下位・中央値の実態 上位の実態
モバイル(比較) 115,000本 新規の4.6%しか2年で月1万ドルに届かない 上位10%が年+306%
Steamのインディーゲーム 生涯売上5,000〜15,000ドル、約半分が5,000ドル未満 95パーセンタイルで50万〜200万ドル
Chrome拡張 70.4%が100ユーザー以下、約7割が収益ほぼゼロ 10万ユーザー超で月1〜5万ドル
Shopifyアプリ 13,786本 収益の中央値が月1,000ドル未満 上位1%が100万ドルARR
Fab(Epic) 42万リスティング/2万パブリッシャー クリエイター総収益2,400万ドル=平均で年1,200ドル
MCPサーバー 2万台超 収益が発生しているのは5%未満

モバイル市場と同じく、他の市場でも中央値が事業として成立しない水準に張り付いていて、上位だけが桁違いに取っています

例えばFab(Epicが運営するゲーム開発向けのアセット販売所)は、2025年の1年間でリスティングが42万件超(年初の3倍)、パブリッシャーが2万人超(年初の2倍)に増えて、その年のクリエイター総収益は2,400万ドルでした。2万人で割ると1人あたり年1,200ドルになります。なおこれは年末時点の人数で割った概算なので、通年で出品していた人の平均はこれより高くなります。

MCPサーバーは極端で、2万台以上あるのに収益が発生しているのは5%未満です。インフラだけ先に立ち上がって、市場がまだ無いという状態になっています。

収益が非公開の3プラットフォーム

ここから先は、個々の作り手の収益が公開されていないプラットフォームです。 公開APIを叩いて「上位がどれだけ占めているか」を取得し算出しました。(2026年8月取得)

プラットフォーム 母集団 上位の集中 収益データ
VS Code 139,961本 インストール上位200本のうち79本(39.5%)がMicrosoft・GitHub製 非公開(そもそも課金機構が無い)
Atlassian 6,051本(cloud) 売上上位30本が6カテゴリに集中、いずれも老舗 順位のみ公開・金額は非公開
Roblox 上位500タイトルが開発者収益の約60%(二次情報) 総額のみ公開・タイトル別は非公開

VS Code は拡張機能が139,961本あります。インストール上位200本のうち、79本(39.5%)がMicrosoftとGitHub製でした(Microsoft 72本、GitHub 7本)。残り121枠を、13万9千本で奪い合っています。

しかも上位に食い込んでいる個人製の拡張は、どれも古いものです。Live Server、Code Runner、Material Icon Theme——いずれも何年も前から積み上がったインストール数になります。

Roblox は、上位500タイトルが開発者収益全体の約60パーセントを占めています(二次情報)。年間支払いの中央値は約1,440ドル、85%が月100ドル未満です。2025年の支払い総額は15億ドルで前年の9億2,300万ドルから大きく伸びていますが、総額の伸びと個人の期待値は全く別ということになります。

Atlassian は少し様子が違って、cloud版で6,051アプリと母数が小さくなっています。ただし売上上位30本はカテゴリが6つに固まっていて(テスト管理、レポート/BI、作図、ワークフロー自動化、工数管理、外部連携)、どれも老舗が押さえています。

同人作品販売マーケット

同人作品(同人誌・音声・ゲームなどのダウンロード販売)マーケットを調査しました。 同人販売のプラットフォームは、客が倍近く増えたのに売れた数がほとんど増えていません

FANZA同人が公表している年次レポートによると、年間訪問者は1億2,000万人超(2024年)から2億2,500万人(2025年)へ、約87パーセント増えました。ところが販売本数は1億7,500万本超から1億9,000万本超で、伸びは約8.6パーセントにとどまっています。

FANZA同人 2024年 2025年 伸び
年間訪問者 1億2,000万人超 2億2,500万人 約+87%
販売本数 1億7,500万本超 1億9,000万本超 約+8.6%

FANZA同人の訪問者と販売本数。2024年を100とすると2025年は訪問者187・販売本数109

AI作品の対応

同人販売プラットフォームでは、AI作品に対して制限をかけ始めています。DLsiteは2024年2月にAI生成作品を月3作品までに制限し、FANZAも2024年11月に月3本の制限を導入するなど、AIを使って簡単に稼ぐことは困難になりつつあります。

3Dモデル販売マーケット

VRChat向けアバターなどの3Dモデルを売っているBOOTHは、供給が増えても伸びています

pixivが公開している「BOOTH 3Dモデルカテゴリ 取引白書2026」の、BOOTH全体ではなく3Dモデルカテゴリだけの数字を基に算出しました。

2025年の年間取扱高は約104億円で、2024年の約58億円から前年比179パーセントです。注文件数は約774万件、注文者数は約28.1万人でした。前年版の白書に2024年の数字も出ているので、3つ並べるとこうなります。

BOOTH 3Dモデル 2024年 2025年 伸び
取扱高 約58億円 約104億円 約+79%
注文件数 約402万件 約774万件 約+93%
注文者数 約21万人 約28.1万人 約+34%

BOOTH 3Dモデルカテゴリの2024年と2025年。注文件数の伸びが注文者数の伸びを大きく上回る

3つとも伸び方が違います。 注文者は34%しか増えていないのに、注文件数は93%増えています。増えた分の多くは、人数ではなく1人あたりの購入回数から来ています。

注文件数774万件を注文者(その年に1件以上注文した人)28.1万人で割ると、1人あたり年27件になります。2024年は402万件÷21万人で約19件なので、1年で19件から27件に増えた計算です。

この読み方は私の割り算だけが根拠ではなく、白書自身が注文件数の伸びが注文者数の伸びを上回っている、つまり1人あたりの購入数が増えていると明記しています。

最頻価格帯は5,000〜6,999円で、年間支出10万円以上の層が5〜10万円の層を上回っています。

なぜ老舗が強いのか(参入障壁の正体)

積み上がる指標が、そのまま参入障壁になっているからだと推察できます。インストール数、レビュー数、被リンク、検索順位といった指標です。どれも時間が経つほど増えて、新規は同じ土俵に立てません。VS Codeでインストール数順に並ぶマーケットプレイスなら、上位にいること自体が上位に居続ける理由になります。

モバイルの69%も同じで、2020年より前のアプリは、すでに課金しているユーザーを抱えています。新規獲得をやめても収益が続きます。一方で新規アプリは、年次チャーン72%の中で獲得し続けなければなりません。

新規参入者に勝ち筋はないのか

そんなことはありません。新規参入者でも勝っているパターンはあります。

Robloxを見ると、今の同時接続1位は Steal An Egg で769,940人です。ところがこのタイトル、累計の高評価は254,197しかありません。2位の Murder Mystery 2 は1,040万、4位の Blox Fruits は1,250万です。桁が2つ違います。つまり最近立ち上がったばかりの新作が、老舗を同接で抜いていることになります。

では、新規が勝てているのはどんな作品でしょうか。上位5本の中身は、どれも1行で説明が終わります。

タイトル 公開日 内容
+1 Web Swing Escape 2026年7月31日 動くたびに速度が+1される。ウェブで飛び回ってゴールを目指す
+1 Drain Water Per Click 2026年7月25日 クリックするたび水が+1抜ける。プールを空にして魚を集める
+1 Superhero Evolution 2026年7月27日 クリックするたびパワーが+1される。強化してヒーローを解放する
Clean all the leaves! 2026年7月21日 庭の落ち葉を全部掃除する。道具を強化して速くする
Clean the WORLD! 2026年7月13日 落ちているゴミを拾って世界を綺麗にする

公開日はRoblox APIが返す作成日時で、5本とも計測時点(2026年8月)から1か月以内に公開されたものです。

クリックや移動で数値が1ずつ増えるだけのインクリメンタル系と、「盗む」「掃除する」だけの反復作業ゲームです。制作難易度が最も低い部類のフォーマットが、上位も新興枠も占めています

Atlassianでも似たことが起きていて、Trendingの1位は Claude Agent for Jira(インストール4,712)、3位が Cursor(2,520)、6位が GitHub Copilot for Jira(2,410)です。AIコーディングエージェントとの連携という、去年は存在しなかった枠に新規が入ってきています。ただしこの3本は全部無料です。

逆転が起きるのは、積み上げが効かない場所、つまり「まだ誰も積み上げていない新しい枠」か「積み上げより回転が速い流行フォーマット」のどちらかに見えます。既存カテゴリで同じものを作って追い抜く、という筋の実例は、今回数えた範囲では見つかりませんでした。

ここから言えるのは、効いているのは作り込みの深さではなく、今ユーザーが集まっているフォーマットに乗れているかどうかだという点です。

結論

個人開発はオワコンではありません。しかし「すでに成功している市場に同じものを出す」戦略はオワコンに近いです。勝つには新しい波を見つける必要があります。

数字で確認できたのは、次の3点です。

  • 既存カテゴリに後から入ってシェアを取るのは困難です。上位の席は先に入った側が押さえたままになっています
    • モバイル:サブスク収益の69パーセントを、2020年より前にリリースされたアプリが占めています
    • VS Code:インストール上位200本のうち79本がMicrosoft・GitHub製(39.5%)。残り121枠を13万9千本で奪い合っています
    • Roblox:上位500タイトルが開発者収益全体の約60パーセントを取っています
  • どの市場も参入者は増え続けています。モバイルで月2,000本→14,700本、Fabでリスティング3倍・パブリッシャー2倍。しかもモバイルの年次チャーンは56%→72%に悪化していて、入れた分だけ抜けています
  • 一方で、新しい需要が生まれた場所では後発でも勝てています。Robloxの新興枠は5本とも公開から1か月以内、Atlassianではインストール2,000〜4,700件のAIエージェント連携が上位に入っています

狙うべきは既存の勝者との正面衝突ではなく、まだ競争が積み上がっていない新しい市場・需要・フォーマットということになります。