「2026年に伸びるニッチ」を検索せず、マーケットプレイス5つのAPIで数えた

個人開発で何を作るか決めようとして、まず検索した。「2026年に伸びる副業ジャンル5選」「マイクロSaaSで稼ぐ実践ガイド2026年版」「競合ゼロで勝ち残る!新規事業×ニッチ市場」。10本ほど読んで、何も決まらなかった。

決まらなかった理由は、調べたら2つあった。どちらも別記事にしてある。

なので、検索するのをやめた。マーケットプレイスには公開APIがあって、何本並んでいるか・どれが上位かをその場で数えられる。JetBrains、VS Code、Atlassian、Roblox、ChatGPT Apps の5つを叩いた結果を置いておく(2026年8月23日時点)。

数えてみたら、5つとも上位集中の形は同じだった。ただし「稼げない理由」が5つとも違っていて、そこが一番使える情報だった。

JetBrains — 1万本のうち、有料は418本

searchPluginspricingModels を付けて件数だけ取ると、こうなる。

区分 本数
全プラグイン 10,000
有料(PAID) 418
フリーミアム 186

有料は4.2パーセント。フリーミアムを足しても6パーセントに届かない。1万本のうち9,400本が、最初から無料で配られている場所だった。

売れている側を見る。有料プラグインをダウンロード順に並べると上位はこうなる。

# プラグイン DL数 評価
1 ANSI Highlighter Premium 1,550,287 4.87
2 Extra Icons 1,390,323 4.92
3 Spring Boot Helper 980,447 4.88
4 MyBatis Log 629,353 4.29
5 BashSupport Pro 611,523 4.91
6 Gerry Themes Pro 543,169 4.95
7 React Native Console 431,427 4.38
8 OrchidE(Ansible) 353,054 3.08

価格APIも引いた(US・個人ライセンス)。

  • ANSI Highlighter Premium … 月1ドル / 年10ドル
  • Extra Icons … 年12ドル(2年目10ドル、3年目7ドル)
  • Spring Boot Helper … 年18ドル(商用は年25ドルから)

1位が「ログのANSIカラーコードを色付けするだけ」、2位が「アイコンを増やすだけ」。技術的な難しさと売上が全く相関していない。評価はどれも4.8〜4.9で、狭い不満を完璧に消すものが勝っている。

ただし155万ダウンロード × 10ドルという掛け算はできない。プラグイン別の課金ユーザー数が非公開なので、有料転換率が分からない。ダウンロード数から売上は逆算できない

手数料は15パーセントで、Unityの30パーセント、Apple/Googleの15〜30パーセントと比べて最安クラスだ。条件は良い。それでも有料を出しているのが418本しかない。

VS Code — 13万9,961本あって、課金の仕組みが無い

Gallery API で全件数を取ると 139,961本。JetBrainsの14倍ある。インストール上位10本のうち7本がMicrosoft製だった。

上位200本まで広げて発行元を数えると、79本(39.5パーセント)がMicrosoftとGitHub。内訳はMicrosoft 72本、GitHub 7本だ。

ただし個人の到達率は、今回の5つでここが一番高い

拡張 発行元 インストール
Live Server Ritwick Dey(個人) 81,570,510
Prettier Prettier 70,998,923
GitLens GitKraken 52,185,227
CMake twxs(個人) 46,591,902
Code Runner Jun Han(個人) 41,507,062
Material Icon Theme Philipp Kief(個人) 35,282,877
Claude Code for VS Code Anthropic 23,782,525

Live Serverは個人が作ったもので8,157万インストール。ここまでは行ける。

問題はその先で、VS Code Marketplace には課金の仕組みが無い(2026年8月時点)。有料にしたければ自分でライセンスキーの基盤を作る必要がある。だから上に並んでいるものは全部無料だ。8,157万インストールが、マーケットプレイスの中では1円にもならない

GitLens(GitKraken)やWakaTimeが収益化できているのは、拡張の外に有料サービスがあるから。PHP Intelephense は自前でライセンスキーを配って有料版を売っている数少ない例だが、これも「自分で決済基盤を作った」という話になる。

つまり「VS Code拡張で稼ぐ」は、正確には拡張を無料で配って別のところで課金するという意味になる。それは拡張を作る話ではなく、SaaSを作る話だ。

日本語で「VS Code拡張 稼ぐ」を検索すると、出てくるのは「自作して公開するまでの流れ」「サクッと作れる開発〜公開までの方法」ばかりで稼いだ話がほとんど出てこない。たぶん理由はこれだと思う。

Atlassian — 売上1位のインストールは25,689件

Atlassian Marketplace には filter=top-grossing という公式の売上順ランキングがある。金額は出ないが順位は取れる。cloud版の上位10本と、それぞれのインストール数はこうだった。

# アプリ インストール
1 Xray – Test Management for Jira 25,689
2 ScriptRunner for Jira 34,948
3 draw.io Diagrams 62,704
4 Timesheets by Tempo 27,228
5 Zephyr – Test Management 15,588
6 Structure by Tempo 13,120
7 Gliffy Diagrams 16,282
8 Zephyr Essential 10,324
9 Jira Misc Workflow Extensions 16,821
10 Table Filter, Charts & Spreadsheets 15,087

今回いちばん驚いた数字がこれで、売上1位のXrayはインストールが25,689件しかない。一方インストール1位は GitHub for Atlassian の136,718件だが、無料連携なので売上ランキングには入らない。draw.io は62,704インストールで売上3位だ。

この市場は「数万社に高い金額で売る」構造で、消費者向けアプリの数百万DLとは経済が別物になっている。売上上位30本のカテゴリは6つに固まっていた。

  • テスト管理 4本
  • レポート/BI 5本
  • 作図 3本
  • ワークフロー自動化 4本
  • 工数・ポートフォリオ 4本
  • 文書管理・外部連携 6本

そして上位30本すべてが有料かつ Forge/ネイティブ(APIの deployment.connect が false)だった。ただしこのフラグの定義をAtlassian公式ドキュメントで裏取りできていないので、断定はしない。

条件は今回の5つで最も良い。Forgeアプリは生涯収益100万ドルまでレベニューシェアが0パーセントだ。それでも個人が数を撒く市場ではなく、法人に売る市場になる。

測れなかったのはここで、Atlassianは開発者別の収益分布を公開していない。「上位30本に入れば食える」までは言えても、入れる確率は検証できない。

Roblox — 同接77万の1位と、中央値 年1,440ドル

Roblox は Explore API から、その時点の同時接続数付きでランキングが取れる。

# 体験 同時接続 累計高評価
1 Steal An Egg 769,940 254,197
2 Murder Mystery 2 547,229 10,400,022
3 Brookhaven RP 441,093 8,459,914
4 Blox Fruits 360,552 12,505,924
8 Steal a Brainrot 197,636 15,360,425
14 Clean all the leaves! 101,330 38,139

1位の Steal An Egg は同接769,940。ところが累計の高評価は254,197しかない。2位の Murder Mystery 2 は1,040万、4位の Blox Fruits は1,250万だ。桁が2つ違う。最近立ち上がって一気に伸びた新作が、老舗を同接で抜いている。

新規枠(up-and-coming)を見ると、何が起きているか分かりやすい。「+1 Web Swing Escape」「+1 Drain Water Per Click」「+1 Superhero Evolution」「Clean all the leaves!」「Clean the WORLD!」。クリックや移動で数値が1ずつ増えるだけのインクリメンタル系と、「盗む」「掃除する」だけの反復作業ゲーム。制作難易度が最も低い部類のフォーマットが、上位も新興枠も占めている

支払い総額の伸びは今回調べた中で最速だ。2025年のクリエイター支払いが15億ドル(2024年は9億2,300万ドル)、2026年Q1のDevEx単体で4億2,300万ドル、前年同期比プラス50パーセント。

ただし分布はこうなっている(これは二次情報)。年間支払いの中央値が約1,440ドル、85パーセントが月100ドル未満、上位0.1パーセントが月10万ドル超、上位500タイトルが開発者収益全体の約60パーセント。

15億ドルと1,440ドルは、同じ市場の同じ年の数字だ

ChatGPT Apps — 売れているものが存在しない

これだけは実測できなかった。https://chatgpt.com/apps はHTTP 403で取得を拒否される。以下は検索経由で確認できた範囲になる。

App Directory は2025年12月ローンチ。掲載を確認できたのは Spotify、Canva、Booking.com、Adobe Acrobat、Figma、Zapier、Instacart、Dropbox、MyFitnessPal、AllTrails、Skyscanner、Coursera、Expedia。全部が既存の大手ブランドで、個人開発のアプリは1本も確認できなかった

そして公式ドキュメントが「アプリ内課金は依然として限定的で開発中」と明記している。現状で推奨されているのは自ドメインでの外部チェックアウトで、承認されるのは物販アプリのみだ。

2026年8月時点の「ChatGPTアプリで稼ぐ」は、稼ぐ経路そのものがまだ無い、という意味になる。

5つ並べると、詰まっている場所が全部違う

プラットフォーム 供給側の数 上位の実態 課金機構
JetBrains 10,000本(有料418本) 1位でDL155万・年10ドル あり(手数料15%)
VS Code 139,961本 上位200の39.5%が公式製 無し
Atlassian 6,051本(cloud) 売上1位が25,689インストール あり(100万ドルまで0%)
Roblox 上位500が収益の約60% あり(DevEx)
ChatGPT Apps 大手ブランドのみ 未整備

「◯◯するだけで稼げる」が成立しない理由は、5つとも違っていた。

  • JetBrains … 到達はできるが単価が年10ドル。売れても小さい
  • VS Code … 到達率は一番高いが、マーケットプレイス内では0円
  • Atlassian … 条件は最良だが、法人に売る話になる
  • Roblox … 到達可能だが、上位500に入るかどうかの一発勝負
  • ChatGPT Apps … 市場そのものがまだ無い

この5つの中で「個人が作れる難易度」と「マーケットプレイス内で直接お金になる」を両方満たすのは、JetBrainsとRobloxの2つだけだった。VS Codeは規模が取れても課金経路が無く、Atlassianは課金条件が最良でも到達に法人営業が要り、ChatGPT Appsはまだ市場が存在しない。

数えて見つかった、空いている枠

「伸びるニッチ」を探すのが目的だったので、実測から言える空きも書いておく。

AIエージェントとの連携(Atlassian)。Trendingの1位は Claude Agent for Jira でインストール4,712、3位が Cursor で2,520、6位が GitHub Copilot for Jira で2,410。上位を占めているのにインストールが数千件しかない=出たばかりということだ。ただし今入ってきているものは全部無料なので、「空いている」と「金になる」は別の話になる。

ニッチなフレームワーク支援(JetBrains)。売れている有料プラグインは Spring Boot、MyBatis、Ansible、Nginx、Redis、Hybris、Salesforce といった特定技術向けだった。汎用ツールではない。単価は年10〜25ドルと低いが、有料プラグインが418本しかないので枠は空いている。

低難易度フォーマット(Roblox)。「+1 ◯◯」「Steal a ◯◯」「Clean ◯◯」が新規枠を占めている。制作難易度は今回の5つで最も低い。ただし流行の回転が速いので、当てにいく性質のものになる。

逆に、VS Code と ChatGPT Apps は空いていても回収経路が無いので、今から時間を使う先としては勧めない。

測れなかったもの

  • ChatGPT Apps のディレクトリ本体 … HTTP 403。掲載アプリ名は検索経由で、一次取得ではない
  • JetBrains・Atlassian の開発者別収益分布 … 非公開。DL数・インストール数から売上は逆算できない
  • Roblox の体験別収益 … 非公開。同接数から売上は出せない。分布(中央値1,440ドル等)も二次情報
  • JetBrains の「全プラグイン10,000」 … APIの上限値の可能性がある。418/186は上限に当たっていないので信用できる
  • Atlassian の deployment.connect … Forge判定に使ったが、公式ドキュメントで定義を裏取りできていない

自分で叩く

どれも認証が要らない。数分で再現できる。

# JetBrains: 有料プラグインの本数と上位(total フィールドが件数)
curl -s "https://plugins.jetbrains.com/api/searchPlugins?max=15&offset=0&orderBy=downloads&pricingModels=PAID"

# JetBrains: 価格(id 9707 = ANSI Highlighter Premium)
curl -s "https://plugins.jetbrains.com/api/marketplace/plugin/9707/prices?countryCode=US&isEnterprise=false"

# Atlassian: 売上順ランキング(cloud)
curl -s "https://marketplace.atlassian.com/rest/2/addons?limit=30&filter=top-grossing&hosting=cloud&withVersion=true"

# Atlassian: 掲載アプリの総数(count だけ見る)
curl -s "https://marketplace.atlassian.com/rest/2/addons?limit=1&hosting=cloud"

# Roblox: 同接付きランキング
curl -s "https://apis.roblox.com/explore-api/v1/get-sort-content?sessionId=abc123&sortId=top-playing-now&device=computer&country=all"

VS Code だけは POST なので、ボディをファイルにしてから投げる。

cat > q.json <<'EOF'
{"filters":[{"criteria":[{"filterType":8,"value":"Microsoft.VisualStudio.Code"}],
"pageNumber":1,"pageSize":200,"sortBy":4,"sortOrder":0}],"flags":914}
EOF

curl -s -X POST "https://marketplace.visualstudio.com/_apis/public/gallery/extensionquery" \
  -H "Accept: application/json;api-version=3.0-preview.1" \
  -H "Content-Type: application/json" \
  --data-binary @q.json

filterType の 8 が VS Code、sortBy の 4 がインストール数順だ。

引っかかった点を2つ。JetBrains の max は15までしか受け付けない(16以上は400が返る)。Atlassian の filtertop-selling という値は無く、正しくは top-grossing になる。

分母を数えるのは、思っていたよりずっと簡単だった。5つ全部で1時間もかかっていない。検索して10本読むより速いし、少なくとも数字の出どころは自分で分かる。