「稼げる」記事を9本開いて出典を数えたら、数字が多い記事ほど出典が無かった

個人開発で何を作るか決めようとして、「2026年に伸びる副業ジャンル5選」「マイクロSaaSで稼ぐ実践ガイド」みたいな記事を10本ほど読んだ。読み終わって、何も決まらなかった。

なぜ決まらなかったのかを、感想ではなく作業で確かめたかったので、記事を1本ずつ開いて、出てくる数字ごとに出典が付いているかを数えた

やってみたら、思っていたのと違う結果になった。「全部スカスカ」ではなかった。

数えた9本

記事 数字の量 出典 著者
Forbes JAPAN「ノートパソコン1台で稼ぐニッチな副業5選」 5個 5個中4個にリンクあり 実名・翻訳者名・原文リンク
メタモ「Robloxで約250万円稼いだ16歳」 多数 一次ソースあり ペンネーム
ノーコード総研「競合ゼロで勝ち残る!新規事業×ニッチ市場」 4個 一部あり(中小企業白書2023など) 記載なし
沖縄マイクラ部「Robloxで収入を得る完全ガイド」 ほぼ無し 末尾に公式リンクの列挙のみ 実名・実績あり
AIVENTURE「個人開発のマネタイズ完全ガイド」 ほぼ無し 無し 名前あり・実体験あり
it-acads「1人SaaS開発で月10万円稼ぐ5ステップ」 ほぼ無し 無し 実体験あり(実収益は非記載)
note「2026年に伸びる副業ジャンル5選」 6個以上 0個 ペンネームのみ・実績記載なし
マイクロSaaS businesshub「稼ぐ実践ガイド2026年版」 10個 0個 記載なし
ShiftB「個人開発の成功事例15選」 多数 ほぼ0個

数字が多い記事ほど、出典が無い

表を数字の量で並べ替えると、きれいに逆相関していた。

数字が一番多かった3本(note、マイクロSaaS、ShiftB)が、そろって出典ゼロだった。逆に出典が揃っていた2本(Forbes、メタモ)は、どちらも数字にリンクが付いている。

具体的に見ていく。

マイクロSaaS businesshub の記事には、「MRR数十万〜数百万円」「AI開発で生産性が3〜5倍」「コアユーザー10〜500人」「ユーザー単価は月額数千〜2万円」「M&A売却価格はMRRの24〜48倍」「Bannerbear事例で5万ドル」など、10個の数値が出典なしで並んでいる。外部からの引用はIndie Hackers創設者の言葉が1件あるだけで、著者名の記載もない。

note「2026年に伸びる副業ジャンル5選」 は12,000字以上ある長い記事だが、「上場企業の約60%が副業を容認(2025年調査)」「YouTube広告市場6,000億円超」「オンライン教育市場4,000億ドル規模」といった数字に、調査機関名もリンクも一切ない。(2025年調査)と書いてあるのに、どの調査かが書かれていない。

ShiftB「個人開発の成功事例15選」 が、今回いちばん引っかかった。Skebの「10億円売却」、Peingの「日800万PV」、ブックメーカーの「17億円売却」、iDMの「月30万円MRR」——15の事例に、公式サイトや本人のインタビューへのリンクがほぼゼロで、読者が確かめる手段がない。さらに「ShiftB受講生データでは77%がリリース」「142名のデータ」という自社データが出てくるのだが、調査方法も期間も母数の内訳も書かれていない。

出典が付いている記事には、共通点があった

一方で、Forbes JAPANとメタモの2本はきちんとしていた。

Forbes JAPAN の「ニッチな副業5選」は、オーディオブック利用率51%にEdison Research、市場規模53億ドルにMarket.us、文具カスタム印刷市場の年平均成長率8.9%にGrand View Research と、5個中4個にリンクが付いている(Instagramのユーザー数30億人だけ出典なし)。著者名も翻訳者名も原文リンクもある。

メタモ「Robloxで約250万円稼いだ16歳」 はもっと徹底していて、本人名(Jacob Korff)が書かれていて、The Hour紙とPatch紙という一次ソースへのリンクがある。Robloxの日次ユーザー数5,780万人には公式IR、公開ゲーム数3,200万にはRoblox公式が脚注で付いている。

この2本に共通しているのは、扱っているのが「特定の1人・1社の実例」だということ。逆に出典ゼロだった3本は、どれも「5選」「15選」「実践ガイド」という一覧・網羅型だった。

一覧型は、数字を集めてくる範囲が広い。広いぶん、1個ずつ出典を確かめるコストが上がる。そのコストを払っていない記事が、検索上位に並んでいる、という構図に見える。(これは私の解釈で、書き手の意図を測ったわけではない。)

数字が無い記事は、別の種類だった

もう1つ分かったことがある。数字がほとんど出てこない記事が3本あった。

  • AIVENTURE「個人開発のマネタイズ完全ガイド」——出てくる数字は「7パターン」「5ステップ」といった分類の個数だけ
  • it-acads「1人SaaS開発で月10万円稼ぐ5ステップ」——タイトルの月10万円以外、金額が出てこない
  • 沖縄マイクラ部「Robloxで収入を得る完全ガイド」——DevExの最低要件「Robux 30,000」くらい

これらは出典が無いのだが、代わりに著者の実体験に依拠している。AIVENTUREは著者名(Ren)と「Swift歴1年・Web開発未経験からMyBlog AIをリリースした」という経緯が書いてあり、it-acadsも自分でThreadPostを作った経験から書いている。

出典が無いことは同じでも、「自分がやったこと」を書いているのか「どこかから拾ってきた数字」を並べているのかは、全く別の話だと思う。前者は検証できないが嘘をつく動機も薄い。後者は、数字が独り歩きする。

読むときに見る3か所

9本開いてみて、判定に使えると思ったのは次の3つだった。数分で済む。

1. 数字の隣にリンクがあるか。「(2025年調査)」のように調査名を伏せた括弧書きは、出典ではない。どの調査かが書かれていないなら、確かめようがない。

2. 一覧型か、単一事例か。「◯選」「完全ガイド」「実践ガイド」というタイトルで、かつ金額が大量に出てくる記事は、今回のサンプルでは全滅だった。逆に1つの事例を掘っている記事は出典が付いていた。

3. 自社データが出てきたら、母数と方法を探す。「受講生データでは77%」のような数字は、母集団の取り方しだいでどうにでもなる。方法が書かれていないなら、その数字は比較に使えない。

英語圏はもっとはっきりしている(が、確かめきれなかった)

日本語より先に英語で調べていて、bigideasdb・preuve.ai・aimagicx といったサイトが「340パーセント成長」「痛み度4.5/5、競合8社未満」のようなスコア付きでニッチを並べているのを見つけた。同じ数字が複数のサイトに載っていることもあるが、たどると互いを引用し合っているだけだった。

ただし今回、bigideasdb のスコア算出方法を確認しようとしたらHTTP 429で取得できなかった。上の記述は以前に見た範囲のもので、methodologyページの有無まで確認できていない。日本語9本のような1本ずつの検証はしていないので、英語圏については同じ強さでは言えない。

やり方

特別なことはしていない。記事を開いて、数字を拾って、その数字の隣にリンクがあるか見るだけ。

  1. 検索して上位に出てきた記事のURLを控える
  2. 1本ずつ開いて、金額・市場規模・成長率・パーセントを全部書き出す
  3. それぞれに、リンク・調査機関名・発表年が付いているかを○×で埋める
  4. 著者名と、実体験の記載があるかも見る

9本で30分ほどだった。「なんとなく薄い」と感じたものを、○×の表にすると判断が変わる。今回でいえば、私は最初「この手の記事は全部ダメ」と思っていたが、実際は2本きちんとしていたし、数字が無い3本は別種の問題だった。


この検証をやった理由は、そもそもこの手の記事が言っている「今から始めても遅くない」が本当かどうかを知りたかったからだった。そちらは供給側の数字を数えれば分かるので、別の記事に書いた。

そして「じゃあ何を作るのか」を、検索ではなくマーケットプレイスのAPIを直接叩いて探した結果はこちらにまとめている。